
「伊勢参宮本街道を歩く」 吉井貞俊
2009年11月1日発行
著 者 吉井貞俊
発行者 岡 達也
発行所 あさひ高速印刷㈱出版部
A5判 並製本 260ページ 写真・図版70葉 定価1、500円
《問合せ》〒662-0974 西宮市社家町1-13 吉井貞俊
西宮市社家町の西宮神社の前権宮司で、西宮文化協会会長の吉井貞俊さんが、伊勢神宮第62回遷宮に向け大阪と伊勢を結ぶ伊勢参宮本街道を歩き、街道筋の風景を克明に描き「伊勢参宮本街道を歩く」を上梓。吉井さんは過去2度本街道を歩きその成果を本にしていて、3度目の街道歩きで描いた絵や文章と貴重な資料をつけくわえ新たに出版の運びとなった。
西宮神社の前権宮司の吉井さんは、西宮神社の歴史を説明する資料にと、約40年前、古地図を模写したのが筆を持ち始めたきっかけという。その後旅先で見た風景をスケッチし、阪神・淡路大震災の被害から復興していく街の様子なども克明に描いてきた。新幹線から見える景色をすばやく描きとめる技は達人の域、車窓風景をつないだ豆本サイズの絵巻物など、作成した図巻は多数に及ぶ。
伊勢本街道を描き始めたのは、伊勢神宮が20年に一度社殿をそっくり新しく建て替える60回目の式年遷宮(昭和48年)を控えた昭和45年頃で、その成果を「伊勢参宮本街道」として発行。61回目の遷宮(平成5年)でも街道筋の変化を記録しようとスケッチし「遊行 伊勢本街道」を出版した。そして、第62回神宮式年遷宮(平成25年)に向け、今回も時代の変遷を確かめたくて3度目の街道歩きに挑戦。昔ながらの建物がなくなり旧宿もほとんどが廃業し道も歩行者には歩きづらくなったが、「時代と共に人々の暮らしも変遷するのが当たり前、街道のありのままを描きたい」と、実際に自分の足で歩いた吉井さんの言葉にはやはり重みがある。
「伊勢本街道を遷宮ごとに歩きその記録を残せば、遷宮が単なる神宮の神事というものではなく、20年ごとの世の移りかわりが明らかにになり、街道のあちらこちらから浮かび上がってくる変貌の実像が描き出される。もしこれが江戸時代・明治の頃にもそのような観点から記録されていればどんなに価値あるものになっただろうかなどとつい思ったりしてしまう」と語る吉井さん。時代の流れを記録する貴重な一冊となった。
